街道遍路

歴史街道・史跡探訪ピンポイントガイド

【奥の細道01】深川(東京都江東)

月日ハ百代ノ過客ニシテ、行キ交フ時モ又旅人ナリ。
舟の上に生涯を浮べ、馬の口とらえて老をむかふる物は、日々旅にして旅を栖とす。古人も多く旅に死せるあり。予もいづれの年よりか、片雲の風にさそはれて、漂泊のおもひやまず、海浜にさすらへて、去年の秋江上の破屋に、蜘蛛の古巣をはらひて、やや年も暮、春立る霞の空に、白川の関こえんと、そヾろ神の物につきて心をくるはせ、道祖神のまねきにあひて取もの手につかず、もゝ引の破をつヾり、笠の緒付かえて、三里に灸すゆるより、松島の月先心にかゝりて、住る方は人に譲り、杉風が別墅に移るに、


草の戸も住み替る代ぞ雛の家


面八句を庵の柱に掛置。


松尾芭蕉は江戸深川に小さな庵をあんでいた。門下生から贈られた植物(芭蕉)が風土にあったのか繁茂し、軒を覆うほどであったと俳聖は書いている。これによって以後、草庵は芭蕉庵と呼ばれ、のちに俳聖自身の雅号となる。芭蕉庵は大火で類焼したり、二度移動しており、現在、その場所は完全には特定されていない。
隅田川が三又になり富士山が見えるとの記述もあることから、小名木川との合流地点あたりに芭蕉庵があったと推測されている。そこには現在、芭蕉像が建てられ、その視線の先には隅田川を行き交う舟があった。

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大正六年大津波で偶然見つかった芭蕉愛好の石蛙。

東京で500名以上の犠牲者を出した大正六年の大津波は、実際には台風による高潮である。この自然の猛威のあと、偶然にも松尾芭蕉が愛好したといわれしばらく行方不明になっていた蛙の石像が発見された。誰かがひそかに持っていたのか、土の中に埋もれていたのか、はたまた池の底にでも沈んでいたのかは分からない。いずれにしても隅田川流域から大水が引いたあとに、ぽつんとそれは残されていた。
この石蛙が発見された場所が芭蕉庵跡というわけではないだろうが、現在は芭蕉稲荷が建てられている。
稲荷に置かれている石の蛙はレプリカであろう。本物は資料館に展示されている。

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古池や〜の句碑
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芭蕉記念館。「草の戸も」の句碑は、芭蕉記念館内にある。
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近くの清澄庭園内にも芭蕉句碑はある。
清澄庭園は美しい回遊式庭園。入場は有料。
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より大きな地図で 「おくのほそ道」ピンポイントガイド を表示

「おくのほそ道」の旅は、いわば芭蕉の足跡をたどるオリエンテーリングである。芭蕉は旅の先々で俳句を詠んだわけだが、それぞれの句のゆかりの地には、句碑が建っている。それら句碑は、ときには寺の中にあったり、滝のふもとにあったり、小学校の中にあったりする。それらの句碑を訪ねることによって、おのずと芭蕉の句境をなまで感じることができるのである。


しかし実際にやってみると、これがなかなか見つからない。通常の地図と住所だけをたよりに迷いつつ句碑を探すのも楽しいことだが、時間がない人には絶対的にオススメなのが『奥の細道の旅ハンドブック』(久富哲郎著・三省堂)である。


なんといっても著者が実踏探査した句碑がすべて手書きの地図で記されている。どこそこの煙草屋の角を曲がって20メートルとか、手書き地図でしかなしえない味わいと正確さ、まさに感性に訴えるガイドとなっている。一度この本を腕に旅に出れば、旅から帰ってきたあとも、仕事をしているときも、先のページをめくって地図を眺めているだけで、気分は漂泊の人生となる。
しかし残念ながら2014年現在は絶版。中古でのみ入手可能となる。


奥の細道の旅ハンドブック

奥の細道の旅ハンドブック