街道遍路

歴史街道・史跡探訪ピンポイントガイド

東北被災地に行く

 海沿いに住む者として、娘にはしっかり見ておいてほしいと思ったので、時間がなかったが日帰りで東北の被災地に行った。
 宮城県の名取。
 この広大な平野部は学生時代に何度もオートバイで走った。小田原がある足柄平野よりも広い。まさかこんな平野を巨大な津波が襲い、多くの命が失われたということが実感として理解できない。
 国道4号線はいたってふつうの状況。海岸にむかって県道を走る。海の近くまで来たが、住宅地では洗濯物が干され、ローソンが営業している。いたってふつうの日常。
 しかしそこから1分も進まないうちに、すべてが変わった。ヘドロと潮のまじりあった強い匂い。ついこのあいだまで、ここにも日常があったことを目に焼き付けておかなければならないと思った。
 クルマを停めてドアを開けようとすると、とつぜん盗難防止装置が作動した。荒れ野にサイレンが鳴り響き、ハザードランプが点灯。
 解除の手順を踏んでも状況が変わらない。走りだせば解除されるかと思ったが、走っても変化なし。なかばパニックになりながら、あれこれやっていると、唐突に装置が止まった。
 ドアロック連動の装置である。僕らが車内にいるのに装置が作動するはずがないのに。何度考えても理由は分からなかった。