街道遍路

歴史街道・史跡探訪ピンポイントガイド

手食の滋味(佐渡島から)

 佐渡の玄関口である両津港近くの秋津温泉に投宿。
 加茂湖をのぞむ高台の古い宿です。
 宿では夕食を出せないと言われ、すぐ隣に地元スーパーがあったので、総菜コーナーで煮込みハンバーグ弁当を買って帰りました。部屋にもどってから箸をもらうのを忘れたことに気づき、歯ブラシの柄とか代用品をいろいろ考えましたが、けっきょく手で食べました。晩飯を手だけで完食したのは、案外、生まれて初めてかもしれません。


 わびしさを抑えるために、佐渡という島では手で食うのが流儀、ご覧なさい、朱鷺(とき)なんか手さえ使いませんですよ。箸やらフォークなぞ粋(いき)じゃあございませんね、スプーンにいたっては無粋きわまって見ちゃあいられませんや、などと勝手に妄想が展開していきます。
 煮込みハンバーグに指をつっこみ、ああ、私はなんて粋(いき)なんだろう、これぞ佐渡の王道よ、と、ひとり悦に入るのでした。
 世界の中では、手食の文化圏が意外に広く(佐渡はそうではありませんが。念のため)、香り、味覚の他に、手で味わうというもうひとつの喜びを彼らは知っている、というような話をどこかで読んだことがあります。
 確かにそう思って手食すると、煮込みハンバーグをつまんだときなど、これがどうしてなかなか味わい深く、佐渡米なども、まろやかな指先の感触がえもいわれず、食が進むにつれ、これはもう手で食わないやつは、ばかか朴念仁ではないかと思うぐらいに、みごとに自己暗示というか自己洗脳に成功したのでした。
 ガラス窓の外を見やると、暮色の加茂湖。ふと、ガラスに映った自分の姿を見て、
 やっぱり、わびしい。



窓から加茂湖と両津の町



佐渡国際トライアスロン大会(アストロマン)の競技説明会初日。まもなくこの会場が、基礎代謝量むんむんの世にも暑苦しい男女たちで満席となります。



やった〜。赤いスイムキャップはアストロマンの証。