街道遍路

歴史街道・史跡探訪ピンポイントガイド

くじら料理三昧。房総「くじら屋」

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●股間にのぞく大海原は、海が持つ根源的意味をそぎ落とし、まさに啓示上学的なイリュージョンを与えさえしちゃったりする。ここに旅を感ずるものが、冒険家であったりする。ほんとか??

この日は千葉県と神奈川県在住の女性ゼファーナナハン乗りのツーリングに乱入。
 さすが女性主催のツーリングだけあって、視点が違う。房総は市道・農道に至るまで走りまくってきた俺だが、考えてみれば、ひたすら見てきたのは道ばかり、バイクを降りて歩くこともなく、土地のものを食うわけでもなく、コンビニばかり。同じ房総でも視点が違えば別世界。
 衝撃ベストスリー。

1、くじら料理グルメ三昧
 外房の鴨川のほど近く。安房郡和田町。房総周回道路である国道128号沿い。俺はここを何百回通過していたことだろう。まさかこんなすごいものが食える有名スポットがあるとは! くじら屋を運営するのは、「外房捕鯨株式会社」。「ソトボウ」ではなく「ガイボウ」と読む。ガイボウホゲイ株式会社。名前からしてソソられる。
 ガイボウホゲイ株式会社にふさわしく、店員のおばちゃんたちは実にガイボウホゲイという感じである。詳細は割愛するが、これはぜひ行っていただければ実感できるであろう。
「ああ、なるほどガイボウホゲイってわけだ」
 くじらの刺し身、くじらの唐揚げが人気メニュー。女性たちは唐揚げが人気であったが、俺は迷わず刺し身を選ぶ。
「ほんとにナマなの?」
「そりゃあ冷凍はしておりますが、正真正銘のナマです」とはおばちゃんの弁。
 さて、出てきたクジラの刺し身は血まみれの馬刺といったところ。白いツマがどす黒い血に染まって、これはなかなかのスプラッタ料理である。おばちゃんの説明では、赤身がツチクジラの肉、白いのはミンククジラの皮で、食べるときは皮で肉を包むとよろしいとのこと。なぜツチクジラの肉をミンククジラの皮で包むのかは謎だが、これが逆にツチクジラの皮でミンククジラの肉を包むと想像するといかにもマズそうである。
 さて一口食べるや、俺は完全に、そして断固としてガイボウホゲイ株式会社にエールを送る気になった。旨い旨い! あまりの旨さに俺は口のまわりを吸血人のように汚し、ミンククジラの皮で包むことも忘れて食った。
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●くじら料理の店「くじら屋」を経営するのは、外房捕鯨株式会社。「そとぼう」ではなく、「がいぼう」ホゲイ株式会社と読む。
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●くじらの刺身定食。赤身がツチクジラの肉、白いのはミンククジラの皮で、食べるときは皮で肉を包むとよろしいとのこと。

2、びわアイス
 最近は「道の駅」なるものをよく見る。発想は悪くないが、実にコンビニ的にコンビニエーントで俺はあまり使ったことはない。内房海岸沿いの国道127号沿いに「とみうら道の駅」があり、ここが女性たちとの集合場所だった。房総最南端の市街地である館山のすぐそばである。女性ライダーは実にすごいところで集合するものだと思っていたが、何かの手違いがあったようで、俺は一人でこの道の駅に90分にわたって滞在することになった。
 最初は退屈しのぎに地ビールなど飲んでいたが、さんさんたる南房の太陽がふりそそぐ野外のテーブルで安房麦酒を何本かラッパ飲みしているうちに、得も言われぬ幸福感に包まれてきたのであった。
 さて到着した女性たちに白い目で見られつつ、ビールを勧めたが、
「ここでは、びわアイスを食べるのが目的なんです」
「びわアイスとは、あのビワですか?」
「かなり有名なんですよ」
 なんでも元気が出るそうである。さすが女性の視点は違う。新たな悦びを発見した。びわアイス。すてきだ。
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●道の駅「とみうら」の名物、「びわソフト」を持つのはゼファー750乗りの女性二人。この日のツーリングの主役だ。

3、股間にのぞく大海原
 せまいところから大きなものをのぞく奥深さ。こんな哲学的なオブジェを発見した。それもこれも房総最南端の野島崎灯台周辺の遊歩道を歩いたおかげである。
 今までも何十回もここでは休憩したり、昼食を食ったり、おまけに宿泊までしたことがあるのだが、驚くべきことに観光目玉であるこの灯台を見たことがなかった。しかし女性たちは有無を言わさぬ迫力で、遊歩道散策を決定。
「僕はここでサザエでも食いながら煙草吸ってますんで」
「せっかく来たんですから、さあさあ」
 この初対面の女性の母性的な力によって、俺は十数年破れなかったサンクチュアリへと踏み込んだのであった。そして発見したこのオブジェ。カメラを片手に尻ににじり寄る俺の後ろで、ささやき声が聞こえた。
「きっとお尻マニアよ」
 しかし女性よ、誤解せずに聞いてほしい。尻ではないのだ。俺が見たかったのは、尻のあいだを通して見ることによって異化され、そして高度に抽象化された「海」というイリュージョンなのだから。
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●道の駅「とみうら」で女性ライダーの到着を待つあいだ、地ビールを飲む。安房麦酒は、レッドエール、ブラックエール、ライトエールの3種類。ラッパ飲みにぴったりのビン。そして背景にはわがZXR750初期型。